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名古屋地方裁判所 昭和42年(行ウ)33号 判決 1970年11月10日

名古屋市昭和区州原町二丁目六番地

原告

住田一義

右訴訟代理人弁護士

原田武彦

同市瑞穂区瑞穂町西藤塚一の四

被告

名古屋昭和税務署長

在間尚志

右指定代理人

服部勝彦

大榎春雄

坪川勉

内山正信

右当事者間の課税処分取消請求事件につき、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件訴訟は昭和四五年三月一八日の経過をもつて訴の取下ありたるものと看做されることにより終了した。

右日時以後の訴訟費用は原告の負担とする。

事実および理由

本件記録には、本件につき昭和四四年一一月一三日午前一〇時に第一八回準備手続期日が指定されたところ、原告代理人から書面で期日変更の申請がなされたので、準備手続をなす裁判官は右期日を延期し、次回期日を昭和四四年一二月一八日午前一〇時三〇分と指定した。当裁判所の裁判所書記官余舛良弥は昭和四四年一一月一五日当庁において原告訴訟代理人に対し口頭を以て右次回準備手続期日を告知した。然るところ昭和四四年一二月一八日午前一〇時三〇分の第一九回準備手続期日に原告訴訟代理人は出頭せず、被告指定代理人は弁論をなさずして退廷したので、右期日はいわゆる休止となつた。その後三ケ月以内に当事者のいずれからも期日指定の申立がなかつたので、民事訴訟法第二三八条により昭和四五年三月一八日の経過をもつて本訴は取下げられたものとみなされた旨の記載がある。

原告訴訟代理人は本件につき昭和四五年五月一日期日指定の申立をなし、証人原田武彦、同余舛良弥の証言を援用した。

被告指定代理人は証人余舛良弥の証言を援用した。

よつて按ずるに、証人余舛良弥の証言によれば、余舛裁判所書記官は昭和四四年一一月一三日右第一九回準備手続期日を原告訴訟代理人の事務員伊藤某に電話で告知し、更に同年一一月一五日当裁判所廊下で立会つた原告訴訟代理人に対し右期日を告知したところ、原告訴訟代理人はそれを了承したことが認められ、右認定に反する証人原田武彦の証言は採用しない。

ところで民事訴訟法第一五四条によれば、期日における呼出は当該事件につき出頭した者に対しては期日の告知をもつて足りるが、他の事件について裁判所に出頭した者に対しては期日の告知を以つて呼出状の送達にかえることはできないものとされているところ、前記認定の事実によれば余舛裁判所書記官は偶々他の事件について当裁判所に出頭した原告訴訟代理人に対して右準備手続期日の告知をなしたものであるから、期日告知の点において手続違背があつたことは否定できない。しかしながら右瑕疵は責問権放棄の対象となるものであるところ、前記認定の如く原告訴訟代理人は右瑕疵ある期日告知に対し何ら異議を申述べることなくこれを了承したのであるから、右瑕疵は責問権の放棄によつて治癒されたものというべきである。

してみれば右第一九回準備手続期日の告知は有効であるから、本件訴訟は前記訴訟記録記載の事実により昭和四五年三月一八日の経過をもつて訴の取下と看做されることにより、終了したというべきである。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本重美 裁判官 上野精 裁判官 将積良子)

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